「このトレーニングをすると姿勢を整える筋肉が鍛えられて姿勢が改善しますよ」といった情報をよく目にします.
この情報は間違いではありませんが,「筋トレをして鍛えると日常生活でも自然と使えるようになる」と解釈してしまうのは注意が必要です.
ジムに通い,まんべんなく全身の筋肉を鍛えたとしてもあらゆる動作が万能にできる訳ではありませんよね.
つまり筋肉を「鍛える」だけでは日常的に「使える」ようにはならないのです.
この記事ではサボっていた筋肉が「使える」筋肉になるまでの過程を解説していきます.
なぜサボり筋肉ができあがるの?
結論からいうと「使わなくても問題なく動けるやり方を脳が学習してしまう」ことでできあがります.
例えば,「高い所の物を取る」場面をイメージしてみましょう.背伸びをしたり,腕を高く上げたりして物を取るという動作を自然に行っていると思います.
このとき,肩や背中,体幹などいくつかの筋肉が協力して働いています.
ところが,「高い所の物を取る」という動作そのものをしなくなると,その動作に必要だった筋肉たちは次第に活動機会を失っていきます.
そうして普段からあまり使われなくなった筋肉は,久しぶりに「高い所の物を取る」場面がやってきても,自分の役割を発揮しません.代わりに,日常的によく使われている筋肉たちがその仕事を引き受けてしまいます.
「使わなくてもなんとかできた」という経験が繰り返されることで,脳はその動かし方を正解として覚えてしまいます.
その結果,本来動くはずだった筋肉はますます使われなくなり,サボり筋ができあがってしまうのです.
サボり筋はなぜ意識しても使えないのか?
「この筋肉を使おう」と意識しているのに,うまく力が入らない.
サボり筋について話をすると,こういった感覚を訴える人は少なくありません.
結論からいうと,サボり筋が意識しても使えないのは,筋肉が弱いからではなく,「使うための回路」が脳の中で弱くなっているからです.
脳は「よく使う動き」しか採用しない
人の身体は,動作をするたびにいちいち筋肉を選んで動かしているわけではありません.
過去の経験をもとに,「これが一番楽で失敗しにくい動き」を脳が自動的に選択しています.
そのため,普段から使われていない筋肉は,脳にとって「優先して使う対象」から外れてしまいます.
意識では「使おう」と思っていても,脳の無意識の領域では,すでに別の筋肉を使うプログラムが作動している状態です.
感覚が入らない筋肉は、動かしにくい
普段から使われていない筋肉は,脳にとって「地図が更新されていない場所」のような存在です.
久しぶりに訪れた土地で,「今どこにいるのか」「どちらに進めばいいのか」がわからなくなるように,感覚の情報が乏しい筋肉は,脳が正確に位置や働き方の把握ができません.
そのため,意識して使おうとしても,狙った通りに動かすことが難しくなってしまいます.
「力を入れる」前に、すでに他の筋肉が動き始めてしまう
さらにやっかいなのは,サボり筋を使おうとした瞬間に,すでに別の筋肉が先に働いてしまうことです.
脳は,「うまく使えない筋肉」よりも「確実に動かせる筋肉」を優先します.
その結果,サボり筋が働く前に,よく使われている筋肉が先回りして働いてしまいます.
これではいくら意識しても,サボり筋の出番は回ってきません.
サボり筋は「思い出せない筋肉」
サボり筋は「力が弱い筋肉」でも「使われなくてなくなってしまった筋肉」でもなく,脳が使い方を忘れてしまった筋肉だといえます.
だからこそ,「気合いをいれる」や「回数・重さを増やす」といった方法だけでは,うまく使えるようにならないことが多いのです.
サボった筋肉が日常で使えるようになるには?
サボった筋肉が「使える筋肉」に変わっていくためには,大まかに3つの過程が必要です.
①「脳から指令を出す」練習をする
②「正しい動き」を身につけて日常に取り入れる
③反復練習をして無意識でも正しい動作ができるようにする
この過程を1つ1つ解説していきます.
①「脳から指令を出す」練習をする
筋肉はどのようにして働くのでしょうか?
筋肉は脳からの指令によって働きます.
つまり,筋肉を使うためには,まず脳がその筋肉に指令を出す必要があります.
普段使われない筋肉は,日常的に脳からの指令があまりきていない状態になります.
そのため,意識して動かそうとしても,うまく動かないことが多くなります.
だからこそ,まずは「脳がその筋肉に指令を出す」機会を意図的に作ることが必要になるのです.
②「正しい動き」を身につけて日常に取り入れる
先ほど,「筋肉は脳が指令を出して動いている」ことをお伝えしました.
では,一体何をすれば「脳が指令を出す」機会を増やすことができるのでしょうか.
それは,正しい動作を学習することです.
ここで重要なのは,サボり筋を働かせた「正しい動作」を行うことです.
例えば,コップを取る動作を考えてみましょう.
脳はサボり筋を使わなくても,「コップを取る」という目的が達成できれば,その動かし方を選んでしまいます.
つまり,「サボり筋を働かせてコップを取る」ためには,意識的に訓練を行う必要があるのです.
そのためには,「正しい動作」と「正しくない動作」を,自分で判別できるようになる必要があります.そして,「正しい動作」がわかるようになったら,日常生活の中で意識的に行うことが重要になります.
「意識すれば正しい動作ができる」状態を,生活の中でつくっていくことが必要です.
③反復練習をして無意識でも正しい動作ができるようにする
日常生活の中で,意識して正しい動作ができるようになると,次は意識しなくてもできる状態を目指す必要があります.
自転車に初めて乗ったときを思い出してみましょう.
転ばないようにバランスを取ったり,思った方向に進むためにハンドルを操作したりと,「自転車を乗れるようになる」ことで精一杯だったと思います.
しかし,練習を重ねて乗れるようになると,自転車に乗りながら周りの景色を楽しんだり,考え事をしたりと余裕がでてきますよね.
これは繰り返し練習をしたことで,無意識でも正しい動作ができるようになっているからです.
同じように,サボり筋も,反復して練習することで,意識しなくても正しい動きが自動的に再現できるようになります.
まとめ
使われる機会が少なくなった筋肉は,次第にサボってしまいます.
日常で活躍する機会を失って生まれた「サボり筋」は,正しく使う練習をすることでしか,日常で使えるようにはなりません.
サボり筋を日常で使える筋肉に変えていくためには,
①「脳から指令を出す」ことが起こりやすい状況をつくる
②「正しい動き」を身につけ,日常に取り入れる
③反復練習をして,無意識でも正しい動作ができるようにする
この過程を意識しながら,サボり筋を少しずつ「使える筋肉」にしていきましょう.


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